メニュー

NEWS

JOURNAL 2020.08.07

KARAE Journal Vol.04 作陶家 岸田匡啓


「感動は時間の積層から。時間の積み重なりを楽しんでもらえるような作陶活動を続けたい。」

唐津焼の伝統と新しいモダンな表情をあわせ持つ作風の『鳥巣窯(とりすがま)』窯主、岸田匡啓(きしだまさひろ)さん。KARAE1階のKARAE TABLEには岸田さんの唐津焼陶板アートによって唐津の自然美が表現されています。静岡県に生まれ育ち、唐津に惹かれて移住を決めた岸田さんに、その道のりと作陶家としての展望を伺いました。


静岡県で生まれ育ち、大学進学のため上京された岸田さん。どのようにして唐津焼の道に進まれたのですか?
 
 もともと美術品を見ることや考えることが好きで、大学で美術史を学んでいました。それで大学時代に旅行をしながら日本各地の民芸を見て周ったりしていました。当時から、その土地の風土や素材を反映したものに興味があったんです。そうやっていろんな美術工芸品を見て周るうちに段々と自分自身も作り手になりたい、実際に作ることを通して学びたい、という思いが芽生えました
 ですが、一口に「作る」といってもいろんなものがあります。自分に向いているのは何だろう、せっかくなら素材から形まで自分ひとりで完結できるもの、工芸品そのものに魅力があり、作家の匿名性が高いもの、それに加えて伝統的なものが良い…。そう考えていたときに、大学時代の友人に誘われて、栃木の益子で陶芸ろくろ体験をしました。そして、初めてろくろを回したときに、これだ!と思いました。焼き物作りならばひとりで完結でき、素材づくりから作品の完成まで、全てに携われるのではないかと思えたんです。

数ある焼き物のなかから、なぜ唐津焼を選んだのですか?

 素材づくりから作品の完成まで全ての工程に携わりたいと思っていたので、自分で山から土を取り、窯で焼くスタイルは譲れませんでした。そうなると東京を離れ地方で暮らすのが良いだろうと思いました。いろんな焼き物の中でも、唐津は焼き物の伝統的文化がしっかりと息づいていながらも、あまり産業化されておらず、あくまで焼き物作家個人が各々焼き物を作っている印象を受けました。それは粛々と作陶に向き合いたかった僕にとって大きな魅力で、唐津で焼き物を学ぼうと決めました。

唐津で作陶をはじめて2年が経とうとする頃、唐津焼作家・川上清美さんを師に弟子入りなさったのはなぜですか?

 唐津焼のギャラリーに並ぶ川上さん〔※1〕の朝鮮唐津に一目惚れしたんです。一瞬で人の目を奪うような大きなパワーを感じて、ギャラリーの店主に「この方の住所を教えてください!」とお願いし、その足で川上さんの窯元の門を叩きました。
 実は、作陶を始めた当初、唐津焼の技法を学んだあとは地元である静岡に帰ろうと考えていたんです。ですが、川上さんのもとで修行するうちに唐津焼の土から作る素材の面白さや伝統文化・歴史が息づくこのまちの風土、そして川上さんの作陶に対するひたむきな姿勢に魅力を感じ、唐津への定住を決めました。川上さんとの出会いが僕と唐津の架け橋になったと言っても過言ではないと思います。

〔※1〕川上清美(かわかみきよみ)
1948年ー/長崎県出身の唐津焼作陶家。窯業訓練校で陶芸を学び、備前、唐津で修行を重ね唐津市内で独立。唐津産の原土を使用した力強い作風が特徴で熱狂的なファンを持つ。

ご自身の窯元の場所に標高600mの鳥巣(とりす)を選んだ理由は?
 
 登り窯(のぼりがま)で焼き物をやりたいと思い、唐津で良い場所がないか、といろいろと探していましたが、なかなか自分にあった形や大きさの窯が見つかりませんでした。いっそ登り窯を一から作ろうかと考えていたところ、ちょうどこの窯を手放す方がいるという話を聞いて、窯元を見せてもらったんです。そうしたら全てが思い描いた理想通りで、この窯を譲って頂くことになりました。

「鳥巣窯」の登り窯

岸田さんを惹きつける、唐津焼の作陶の面白さとはなんでしょう?

 素材から作品づくりができることです。土を山から掘って素材を作ると、器を手にしたときの質感や密度まで全て調整できます。焼き上がったものを見て、もう少し密度がほしいなと思ったら素材の作り方を改善してみる。逆に、この素材はこういった特徴を持っているから形はこれが良いだろうと模索する。このように素材から形、形から素材を考える、この終わりのないプロセスと向き合い続けることが、私にとってはすごく面白いんです

岸田さんが目指している器像を教えてください。

 長く使って頂くための強度はもちろん、使うごとに「仲良くなれる」ような器を目指しています。だから、作陶するときには、どういったシーンで使われるのか、ということを念頭に置いています。本格的な料理店で使われても遜色なく、一般家庭でも食事に彩を添える、そういう器であれば良いなと考えています。
 とはいえ、器の魅力は、見る人それぞれの感性や使うシーンによって異なります。だから、なにかひとつの魅力が突出しているといよりは、さまざまな良さが在りながら、主張しすぎず同居している…。どんな角度から見ても飽きない、奥深く多面的なものを目指しています

鳥巣窯・岸田匡啓さんの唐津焼セット

唐津へ移住し作陶家として活躍する岸田さん。今後の展望は?

 感動の根源が何かを見つけることが僕の作陶のテーマです。ものを見たときに何だか力を感じる、あるいは心が静かになる。まるで壮大な自然をみているかのような厳かな気持ちになることがあるんです。これは一種の感動だと思います。じゃあ、この人を引き付ける魅力は一体どこから生まれるのだろう?人はなにに感動するのだろう?と考え続けています。
 最近、それは時間の積層ではないかと思うようになりました。土そのものが生まれた時間、その土をこねろくろを回す人の手、釉薬(ゆうやく)〔※3〕の流れ、器が使われるごとに重なっていく生活の痕。そうした時間の積み重なりに、人は感動するのではないかと。とくに唐津焼は使われることによって表情が豊かになる器です。だから私も、そんな時間の積み重なりを楽しめるような作品を作りたいと思っています。そこに、ほんの少しでも私の感じた感動の要素を取り入れることが出来れば嬉しいです。
 時折、器を手に取ってくださった方が私と同じ、あの厳かな感覚を持って下さるときがあるんです。感動は作り手から器を通して人へ伝わることがあります。人に感動を伝えられるような器づくりを探求し形にしていきたいです。

〔※3〕釉薬(ゆうやく)
陶磁器の様々な表情を出すために、器の表面にかける覆「うわぐすり」とも呼ばれる。この釉薬によって、様々な色や質感を表現するとともに、水や汚れがしみ込むことを防ぐ。

窯・岸田匡啓さんの唐津焼(KARAE ONLINE SHOPより)

ちょこっとこぼれ話

 唐津市浜玉町の山を登っていくと、緑の奥に『鳥巣窯』が現れます。毎年、鳥巣窯で行われる『とりすまつり』は、 料理人を招いてのコラボレーションランチを開催するなどのイベントともに、『鳥巣窯』の新作のお披露目会も行っているそう。「鳥巣の風景や風土、器が制作されるバックグラウンドを知っていただく機会になれば 」という岸田さん。唐津にやってきて黙々と作陶を続ける岸田さんをまちが暖かく包んでいるような気がしました。


岸田匡啓 -Kishida Masahiro-

1983年静岡県生まれ。大学にて美術史を専攻し、2006年から唐津で作陶をはじめる。川上清美氏のもとで3年間の修行を終え、2012年に『鳥巣窯』として独立した。
唐津焼の伝統的技法を駆使しながら、洋食器すらも思わせるモダンな風情と繊細な作風で人気を集め、東京をはじめ各地で個展を開いている。

鳥巣窯 -Torisugama-

住所
〒849-5113 佐賀県唐津市浜玉町鳥巣880-1
TEL
0955-58-2111
WEB
https://masahiro-kishida.jp
Instagram
@masahiro_kishida
営業時間
※作陶状況により異なるため要問合せ
休業日
不定休
駐車場
有 (乗用車2台)


買う/KARAE SHOP

カラエショップのオンラインストアでご購入いただける鳥巣窯・岸田匡啓さんの唐津焼セット

唐津、佐賀、九州の魅力の詰まった KARAE1階のKARAE SHOP 。ご紹介した『鳥巣窯』岸田匡啓さんの作品をはじめKARAEに携わった唐津焼作家さんの作品をお買い求め頂けます。唐津焼のほか、唐津や佐賀由来のお菓子や小物、アクセサリーなどを取りそろえた、”私のお気に入り”がきっとみつかる唐津の小さなアンテナショップです。その他、KARAE1階にある映画館「THEATER ENYA」を運営する(一社)Karatsu Film Prifectの佐賀県NPO支援ふるさと返礼品でもお求めいただけます。

 食べる/KARAE TABLE

KARAE1階「F.L.O.S.S(フロス)」をテーマにしたカフェ&ダイニングのKARAE TABLE。唐津・佐賀・九州の新鮮な食材を楽しめます。唐津の自然を表現した『鳥巣窯』岸田さんと『櫨ノ谷窯』の吉野さんが共同制作した唐津焼陶板アートが壁一面に広がる落ち着いた空間です。MY唐津焼マグカップを選んで楽しんるコーヒーセットもあり、カフェの楽しみ方が広がります。メニュー詳細はコチラからどうぞ。

見る/KARAE Information

KARAE1階のインフォメーションでは、KARAE設立に携わった 『鳥巣窯』岸田さんを含む唐津焼作陶家4人の作品を展示・販売中。また、HOTEL KARAE(3階)宿泊者の荷物預かり、MEME KARATSU(2階)のコワーキングスペース利用受付、ガイド付きまち歩きツアー「歩唐(あるから)」の申し込み受付など、マルチなサービスをご提供しています。

泊まる/HOTEL KARAE

KARAE3階のHOTEL KARAEは、唐津の自然美・白砂青松の風景に着想をカラーコンセプトに、ミニマルで落ち着いた空間となっています。各お部屋には、唐津の七山にある紙漉思考さんの和紙のオブジェが飾られており、ラウンジや廊下には、いろんなアーティストが参加したインテリアが楽しめます。唐津の玄関口に位置し、駅・バスセンターへのアクセスも良好。唐津ならではの体験プランもご用意。唐津焼の窯元巡りのポートとなるようなホテルです。