メニュー

NEWS

JOURNAL 2020.10.30

KARAE Journal Vol.06 デザイナー 三迫太郎


「アップデートし続けて、時代にフィットすることで、新たなステージへ進んでいく」

 福岡を中心に、フリーランスのデザイナーとして活動する三迫太郎(みさこたろう)さん。グラフィックデザインやWEBディレクションなど、ジャンルを超えたデザインワークの傍ら、オリジナルのzine制作やWEBメディアの運営なども行い、「ニュー・ジェネレーション グラフィックス 新世代の注目デザイナー100人」や「MdNデザイナーズファイル2020 」にも選出された、注目のデザイナーです。
 KARAEのロゴデザインも、三迫太郎さんが手がけたもの。そんな三迫さんに、ご自身のお仕事やKARAEのロゴ制作への思いを伺いました。


ジャンルを問わず様々なデザインを手掛ける三迫さん。どのようなスタンスでお仕事をされているのですか?

 自分のことをあえて「○○デザイナー」と肩書を設定せず、クリエイティブ全般のお仕事をさせていただいています。ひとつのことをずっとし続けて極めていくというより、常に広くアンテナを張ってデザインに関わるあらゆることを柔軟に手掛けていくようなイメージです。情報発信の在り方が変わり続けている時代なので、新しいものごとに常にアンテナを張って、時代に応じてクライアントが必要としているものを、その都度提供できるデザイナーになりたいなと。

確かにここ10年でも情報発信や販促のあり方は劇的に変化してますよね。現在、特に注目していることなどはありますか?
 
 最近は「男性のメイク」にすごく興味があります。 きっかけは、コスメブランドの 「THREE」でメンズラインの販売がはじまったとき、男性がメイクをしたポスターを見てすごくカッコ良いなと思ったんです。加えて「自分をケアする、癒す」という視点からもメイクに興味があって、これまで動画などでメイクを学び、自分自身がメイクについてYouTubeで発信したりもしています。

なるほど、男子、メイク、Youtube配信というワードだけでも、イマの時代を感じます。「デザインをする」ときにどのようなことを考えていますか。

 僕は、モノ(商品)の本質と表層とがあった場合に、表層にすごく関心があるんです。モノそのものをつくるのは、その道のプロにお任せして、それをどう見せるか、どうデザインすると届けたい人に届くのか。表層のデザインに携わる人にしか見えない視点もあると思うし、それは時代と共に変わっていくところもあると思います。なので、時代とともに自分自身をアップデートし続けることを大事にしてますね。

自分自身をアップデートし続ける、って面白い表現ですね。何から影響を受けているのでしょうか。

 それは多分自分がもともとはコンピューターが好きで、エンジニア系の高専で学んでいて、パソコンもOSもアプリも常に最新の状態を保つ習慣みたいなことが影響しているんだと思います。

もとはコンピューターのエンジニアの道を目指されてたんですね。そこからどのようにしてデザイナーの道に進まれたのですか?

 高専を卒業してエンジニアとして就職したのですが、肌に合わず1年ほどで退職したんです。それで何かやりたいことはないか模索しているときに、MacのOSXがリリースされたんです。当時、そのデザインのカッコ良さに衝撃を受け、とにかくMacを使う仕事がしたい!と思って地域の小さな印刷会社に転職しました。なので、僕がデザインの道にすすんだのは、車好きが転じてバスの運転手になったような感じで、Macが好きで、それを使える会社に就職した、というのがきっかけなんです。

デザイナーのなかでも、独特のキャリアパスですね。そこから独立するまではどのような道のりだったのですか?

 転職した印刷会社は地元に根差した小さな会社で、折り込みチラシや薬局の薬袋などを制作していました。基本的に決まったフォーマットの広告を制作するので、こちらからデザインを提案することは少なかったのですが、そのルーティーンの中で、デザインの基本を身に付けました。そこで3年間働いたあと、大手の編集プロダクションへ転職しました。そこでは、クライアントへの営業、デザイン提案、制作までを一気通貫して学びました。そんな仕事の傍ら、プライベートではブログを立ち上げ、好きなものや足を運んだ展示会の感想などを書いていました。すると、いつからか読者がつき、ブログはちょっとしたメディアになりました。ブログを通してデザインのお仕事の相談も頂くようになり、その流れで独立を決めました。

デザイナーとして学ぶ中で、三迫さんのデザインやクリエイティビティに最も影響を与えたのは?

 今振り返って思うのは、高専を卒業と同時に住み始めた福岡のまち全体が、デザインの先生になってくれたということです。福岡での暮らしでは、出かける先々に、チラシやイラスト、映画のフライヤーなど、デザインで刺激を受けるものがありました。中でも、当時の福岡はカフェ文化が花開いた時期で、カフェはお茶をするだけでなく、トークイベントや演劇、映画など、様々な文化に触れることができるハブのような存在になっていました。そのカフェブームの火付け役とも言える雑誌編集者の山村光春さんが、福岡でも定期的にイベントを開催されていたんです。デザインや文章を通してカルチャーを確立させた人物が、まさに目の前にいる、というだけでも大きな刺激になりました。そんな恵まれた環境が僕のデザインの感性を育ててくれたと思います。

現在も福岡を中心に活躍する三迫さん。福岡では個展も開いている。

「まち全体」がデザインの先生だったんですね。そんな三迫さんには、唐津のまちづくり会社が運営するここKARAEのロゴも手掛けて頂きました。どのようにして制作されたのですか?

 大勢の関係者との話し合いの中でロゴの絶対的な要件として出たのが、「普遍的なデザイン」であることでした。流行りのものを取り入れると、そのときは新鮮であっても、時間と共に古く廃れてしまう。新しい商業施設だけれども、唐津のまちと共に、これから長い時間を歩もうとしている「KARAE」のロゴは、飽きのこない唐津独特の普遍性を取り入れたいと思いました。

「KARAE」ロゴステッカーを持ちながら当時を振り返る三迫さん。

その思いは具体的にどのような形で表現されたのですか?

 まちの歴史や伝統を守りながらも、未来へ進んでほしいと願いを込めて、「KARAE」の文字にはドイツのFUTURA(フーツラ)というフォントを採用しました。FUTURAはラテン語で「未来」を意味しますが、フツラのフォントは誕生から約100年の歴史があり、ルイヴィトンなど世界中の多くの企業が使用する伝統あるフォント。唐津の、高い建物がない穏やかなまち並みを 、そのフォントを縦に圧縮してアレンジすることで表現しました。
 KARAEのロゴマークの7本のラインは、7つの島をもつ唐津の海のきらめきから発想して、ロゴ全体で福岡から唐津に来るときに車窓から見える海、松原、唐津のまち並みをイメージしています。KARAEの建設に携わったいろんな人の想いがあるなかで、僕のデザイナーとしての考えをすり合わせ、突き詰めた先に、現在のロゴが完成しました。様々なロゴデザインが候補に挙げられるなかで、最終的にはこれしかない!というものに決まったのではないかと思います。

これからデザイナーとして三迫さんの思い描く未来を教えて下さい。

 最初に話したように、僕はデザインを含めた表層部分を得意としていて、本質であるモノ、コトをコーティングするのが仕事です。だから、僕にはできない本質そのものに携わる人にとても興味があります。例えば、KARAEではまちづくりのプロフェッショナルと一緒に仕事をさせていただきましたが、関わる仕事の数だけ、 建築やアート、工芸など、 その道のプロフェッショナルと接することができる。その度に自分自身が世界を切り取る視点が増え、物事を多面的に捉えられるようになります。どんな分野、時代でも、デザインが必要です。仕事を通して増えていく視点を活かして、変わることを恐れず、自分自身をアップデートしながら、時代にフィットしたマルチなデザイナーとして必要とされ活躍できたら本望ですね。

ちょこっとこぼれ話

 実は幼少期にも、秋の例大祭「唐津くんち」を見るために唐津を訪れたことがあると言う三迫さん。「当時はただお祭の迫力に圧倒されるばかりでしたが、大人になって改めて訪れると、まちの至る所に現れる歴史や、今も息づく伝統工芸など、改めて驚かされることも多く、まちの持つ文化力を感じます。福岡の街で過ごすことが多いのですが、唐津のまちにくると、ほっと落ち着くんです」と、唐津の印象をお話くださいました。


三迫太郎 -Misako Taro-

1980年福岡県北九州市生まれ。北九州高専を卒業後、福岡市内にエンジニアとして就職するも、デザインに携わるため退職。印刷会社、編集プロダクションでデザインの経験を積み、2008年10月にデザイナーとして独立。これまで「無印良品 Open MUJI」のロゴデザイン、「三菱地所アルティアム」の宣伝美術、「山鹿灯籠振興会」のプロダクトデザインなどを手掛けている。デザインワークを行う傍ら、zineの制作や福岡のクリエイティブメディアの運営など、多岐に渡って活動している。「ニュー・ジェネレーション グラフィックス 新世代の注目デザイナー100人」や「MdNデザイナーズファイル2020 」に選出される注目のデザイナー。


ふるさと納税で唐津を楽しむ

唐津に遊びに行きたい!唐津の食を満喫したい!そんな皆さんの思いが「ふるさと納税」で実現できます。KARAEの1階の唐津で22年ぶりに復活した映画館THEATER ENYA(シアター・エンヤ)を運営する一般社団法人Karatsu Film Prifect活動を支援する「佐賀県NPOふるさと支援」では、HOTEL KARAEに宿泊したり、唐津のミシュランをとった飲食店で食事を楽しんだり、唐津焼を購入したりできます。これから宿泊できる宿やご予約できる飲食店がますます増えるとのこと。楽しみですね。

買う/KARAE SHOP

唐津、佐賀、九州の魅力の詰まった KARAE1階のKARAE SHOP。三迫太郎さんが手掛けたロゴが入ったKARAEオリジナルグッズも販売中。トートバッグやTシャツ、マグカップなどシンプルで取り入れやすいものばかりです。そのほか、唐津や佐賀由来のお菓子や小物、アクセサリー、唐津焼などを取りそろえた、”私のお気に入り”がきっとみつかる唐津の小さなアンテナショップ。いつでもどこでもお買い物できる オンラインショップも要チェック。